れなの生いたち
「れなのほんとうのお母さん」
 
れなの「2匹のかあさん猫」とも言うべき雌猫です。

左上がれなのおばあちゃんにあたる「ちょこわん(1)」。

右下が本当のれなの母親である「ちょこつー(2)」。

ちょこわんの前にいる

小さいこげ茶色のしっぽの仔猫は

幼い日のれなです。

もうこのとき既に、

子育ては母猫に任せっぱなし、放任ヤンママでした。

 

この2匹はこの古い家と土地に移り住んで初めての冬頃(1998)から、
昼頃の日差しの中にちょこんと、うちの玄関先で佇んでいることがあったため、
この名前で呼んでいました。2匹とも野良猫です。
ちょこわんの方が先にうろつき始め、よく見かけました。
小柄で見てのとおりお世辞にも器量は良いとは言えず、
不自由ではないものの、短めの後肢が曲がっており、
あまり近づくと「シャァー」と歯を剥き出す気性の激しい猫でした。

ちょこつー(愛称:つーちゃん)は最初ちょこわんと間違えていたのですが、
ある時隣家の軒下に2匹連れ立ってもぐりこんで行くのを目撃して
同じような柄の猫が二匹いることを知りました。
そのときはまだ両方とも雌猫とは思わず、つがいなのかと思っていました。

やがて春になり、仔猫を連れて出歩き始めたのを見て、
初めて2匹ともが母猫で、ちょこわんはちょこつーの母親で
あるらしいことが、行動を観察した結果理解できました。

本を読んだら北国の野良猫では数匹の雌猫による共同育児はよくあることらしいです。
厳寒の中、助け合い、暖めあい冬場を凌ぐ知恵なのだそうです。

つーちゃんは細身のきれいな猫で
(...でもれなと同じで写真うつりがよくないのですが)
前後肢も長く、胸から下が真っ白な猫でした。目の色はオリーブがかった金色、鼻がピンクでした。
しかし若いゆえか、子育ては下手くそで、仔猫の後ろ首をくわえて塀を登ることが出来ず、
仔猫を落としておろおろしたり、乳もあまり出ないのか授乳している時間も短く、
つーちゃんの周りにまとわりついていた仔猫はいつも鳴いていました。

その中にれなもいたのです。最初つーちゃんが乳をあげていたのは
3匹でしたが、じきに1匹が見えなくなり、テンツーとれなだけになりました。
乳が出なくて空腹に鳴いている2匹を預かり、授乳していたのは
おばあちゃん猫…とはいえ、2‐3歳と思われる、母猫ちょこわんでした。

ヤンママ猫つーちゃんは、仔猫を抱えてやせていたくせに、偏食も激しく、
牛乳にひたしたパンや固い干し魚をやっても匂いをかいで、ふん、といった風情で
「るるる、パー」と不満げに鳴き、気に入ったもの以外はほとんど食べませんでした。
かわりにばあちゃん猫のちょこわんがガツガツと何でも食べ、
自分の5匹の子供のほかに必死で娘が産んだ仔猫までを子育てしていました。

つーちゃんは遠くに腰を下ろし、白いまっすぐな肢を前にぴっと揃えて微動だにせず
澄んだ瞳で我々を見ていました。
多分、頭の中はからっぽだったかもしれませんが、
そんな姿に見とれてしまうような野良猫にしては美しい猫でした。

そのつーちゃんは、ちょこわんの連れ子の5匹がほとんど離乳して、
育ちの遅いテンツーとれなの世話をすっかりちょこわんに任せて
しまうようになり、やがて姿を消しました。

ちょこわんが「おまえは役立たずだから出ておいき!」と言ったのか、
きれいな猫だから、とおいしい餌をくれる家を見つけたのか、
それはわかりません。

おばかなヤンママ猫でしたが、うちの庭の新緑の中でまっすぐ見据えるポーズをとるつーちゃんは、
今思い出してもやっぱり「キレイな猫だったんだよ」とれなに話し掛けたくなります。

実は、「るるる、パー」という鳴き方を、れなは時々します。
人間なら舌打ちするような場面で、こう鳴きます。
れなの前肢は実母と違い、すこし0脚なのですが、ピっと背筋を伸ばして
腰を降ろし少し遠くからこっちを見据える癖があります。
顔つきはれなの方がFunny Faceですが、やっぱり時々表情が似ています。

(つづく)


きちんと子育てしていた頃のつーちゃん。やがて育児放棄してしまう。


 

「過去のメールレーター」でも、ノラ猫一家のお話が読めます。